男なんて残酷に心を支配してくるんだ

会社の同僚と肉体関係を持ち始めたのは、いつだっただろうか。

秋が終わり冬が訪れる前に私たちの関係は始まり、冬が明ける前に私たちの関係はあっけなく終わった。

 

会社の同僚だし、別に付き合いたいとか、一番にして欲しいなんて微塵も思っていなかった。ただ、仕事の話をすれば尽きることがなくって、食べ物とか洋服の話を沢山して、一緒にいて楽しかった。付き合いたいとか彼女になりたいとか、結婚したいとか。そんな下心は一切なく、友達にただ肉体関係がおまけでついてきただけだったように感じる。

 

関係が終わったのは、同僚に春が訪れたからだった。長い長い冬だったらしい。

すべてのマッチングアプリと繋がりを切り、最後に私に電話をかけてきて言った。

楽しかった、ありがとう。

私は、ただただよかったね。そう言った。そう心から思った。でも、二人でいた時があまりにも楽しかったから、彼ともう一緒にいることはないんだと思うと無性に悲しくなった。

 

恋とか愛とか、不倫とか浮気とか、世の中の倫理観とか概念とかルールとか。全部上っ面で薄っぺらくて、人と人との関係なんて感情なんて言葉では形容出来ないんだと初めて知った。

 

彼との関係が、元の同僚に戻った頃。数か月ぶりに業務上、二人きりで打ち合わせをすることになった。

仕事の打ち合わせが終わり、のろけ話を聞かされる。

この前、彼女と初めてホテルに行ったんだ。錦糸町の。その時、小森さんのこと思い出したよ。

 

男の人って、残酷だ。

今だから、心は揺れないけれど。冷静に考えれば、とても残酷な言葉だ。

好きじゃなくてよかった。好きにならなくてよかった。

心からそう思えた一日だった。

 

今日も私には、愛する人はいない。